訪問看護の利用に関して

訪問看護の利用に関して

訪問看護は介護保険で唯一【医療行為】が許されているサービスです。
平成27年度の介護保険改正から本格的に【施設から在宅へ】【中重度者を中心に】と方向転換を行いました。
今後ますます、在宅で医療を必要とする高齢者が増加する中で
訪問看護が担う役割は大きくなっていくことは容易に想像できます。

国が【2025年問題】までの10年間(団塊の世代が75歳になる年)に
【地域包括ケアシステム】の構築をするにあたり、この訪問看護ステーションの充実なしでは実現不可能でしょう。

また、訪問看護ステーションには【理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等】が在籍しており
訪問看護ステーションで行う【ステーション派遣の訪問リハビリ】が積極的に取り組まれています。
現状では、診療所や病院でないと指定が取れない【訪問リハビリ】より
訪問看護ステーションの【訪問看護ステーションが行う訪問リハビリ】の方が利用率が高いような状態です。

また、24時間対応する訪問看護ステーションの増加も、利用者や家族、介護支援専門員には心強いです。
今後、病院や施設から在宅へという流れの中で【24時間365日】安心して暮らせる在宅の仕組み作りには
欠かせないサービス内容です。

一点だけ気になる所は、【なり手の確保が困難】なところです。
現在の医療や介護全般にいえる事ですが、この【なり手の確保】は今後の制度運営に関して大きな課題となっています。
訪問介護が利用者の【生活を支える】のに対して
訪問看護は利用者の【生命を支える】役目を担っていますから
【なり手の確保】は急務だと言えます。

【訪問看護の申し込み方法】

① 主治医の指示を仰ぐため、主治医に【指示書】を書いてもらう。
  ※あまり知られていませんが、訪問看護独自で医療行為をすることは医師法により禁じられています。
  訪問看護の医療的な位置づけは【医療補助行為】となっているため、主治医の指示がないとなりません。
  指示書は毎月、更新して書いてもらうことになります。
  ※総合病院のDrでも指示書は書いてもらえますが、病院によっては料金が発生する場合があります。  

② 他の介護サービス同様に、担当の介護支援専門員(ケアマネージャー)に【ケアプランを作成】してもらい
  ケアプランの中に【訪問看護】の利用を位置付ける必要があります。

③ 主治医、訪問看護、担当の介護支援専門員(ケアマネージャー)が連携を取り、主治医の意見を十分の聞いた上で
  医療行為の内容、範囲、手順、訪問回数を決定する。

④ 全ての内容が決定したら、訪問看護ステーションと【契約】を行う。

⑤ 訪問看護開始後、訪問看護ステーションが定期的に主治医への報告を行う(状態の変化があった場合はその都度報告)

【訪問看護の利用時間】
20分未満
30分未満
30分以上1時間未満
1時間以上1時間30分未満

※訪問看護ステーションに在籍している、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問する場合

20分×一日最大3回迄
※利用する場合は訪問看護の一環としてリハビリを行う事になりますので
定期的な訪問看護師の訪問による評価が必要になります。

【医療と介護の連携について】

介護職と看護職との連携は、お互いの歩み寄りにより、大分進展がみられています。
介護職は医療分野の知識を勉強し
看護職は介護職の献身的な介護を目の当たりにして
互いが認めあうことで、利用者にとって最も大事なことは何かを、考えた結果
【ケアチーム】として互いに、連携することが、利用者にとって有益だという結論に自然と達したのだと思います。
介護と医療が連携するに当たり、最も有効な手段は【連絡ノート】の活用だと思います。
利用者の日々の状態を記入しお互いに確認することにより、顔をあわすことがない、他のサービス事業所のスタッフ同士が
【ケアチームとしての】結束力が高まる、とてもよいアナログツールだと感じます。

今後、スマートフォンやタブレット端末を事業者独自で導入し、尚且つ、クラウドサービスと組み合わせることにより
より便利で、タイムリーな情報共有が可能になると考えています。

利用者や家族、介護職が今以上に、医療職との関わりを深めていくには【医療に関する知識】を深める必要があるでしょう。
医療に関する知識の中でも特に大切なのが
① 高齢者に多い病気に関する基礎知識
② 薬に関する知識の二つでしょう。

【高齢者に多い病気に関する基礎知識】

【1:脱水、熱中症】

【予防】:夏場でなくても気温が急上昇する、春や湿度が高い梅雨時期等も室温管理には注意が必要

【症状】:唇が極度に乾いている、口腔内が極度に乾いている、背中に汗をかいていない、尿量が少ない又はまったく出ていない
     意識がも朦朧としている 声掛けに反応ない 熱が38度~40度近くある 

【介護で協力できる事】 
  室温の管理 掛布団や毛布の調整 換気
  水分補給 スポーツドリンクやOS1の事前購入 水分量の記入 排尿量の記入、報告
  大中小のアイスノンや保冷剤の事前購入 吸い飲みの事前購入 ストロー付カップの事前購入 トロミの事前購入

【看護で行う事】
  主治医の採決データによる水分量の確認 家族や介護職への指導 検温 主治医への状態報告   
  清拭による体温調整 保冷剤によるアイシング 水分補給
  点滴の実施、管理 主治医の指示を仰ぎ救急車の手配

【対応方法】
  いち早く異変に察知し、室温を下げ、アイシングを行ない、直ぐに事業所へ連絡し、指示を仰ぐ、場合によっては救急の要請。
  OS1が飲めるなら飲んでもらう、飲めない場合は飲ませない。

【2:誤嚥による誤嚥性肺炎】

【予防】:口腔内を常に清潔にしておく、水分でむせ込みが有る場合は、早めに対策を行う。

【症状】:むせ込みが酷くなり(特に水分)高熱が出る。誤嚥し肺に入った食物から細菌が繁殖。
  
【介護で協力できる事】
  食後の口腔ケア 入れ歯の管理 食事に集中できる環境を整える よく噛む様に促す
  ベッドのギャッジアップ機能の活用 ギャジアップ角度を記入 食後すぐに横にしない
  うがい薬の事前購入 トロミの事前購入 嚥下状態に合わせて食事を粗刻み、刻み、ペースト状にする
  
【看護で行う事】
  家族への食事に関する指導
  主治医へ連絡し抗生物質投与の検討 点滴の実施、管理 アイシング
  主治医に確認し救急の手配
  
【対応方法】
 いち早く異変に察知し、アイシングを行う。すぐに事業所へ連絡し、指示を仰ぐ、場合によっては救急の要請。
 主治医の判断により抗生物質の投与、点滴を実施。

【3:尿路感染症】

【予防】陰部を清潔に保つ。オムツ交換は頻繁に行い、陰部洗浄も同時に実施。便失禁の際は念入りに綺麗に。水分摂取を促す。

【症状】突然の高熱(38度~40度)

【介護で協力できる事】
  水分摂取を促す オムツ交換時にはよく洗浄する 定期的な入浴を実施、又は促す
  尿量や色を観察、記入
  ペットボトルのキャップに穴を開け、簡易陰部洗浄器を自作 保冷剤、アイスノンの事前購入

【看護で行う事】
  家族や介護へのオムツ交換指導
  主治医へ連絡し抗生物質投与の検討 点滴の実施、管理 アイシング
  主治医と相談し救急の手配

【対応方法】
 常に陰部を清潔にしているように心がける 下剤投与後には十分気を付ける 日頃から水分量と尿量に気を配る

【薬に関する知識】
介護職は、担当している利用者が飲んでいる薬について知っていることは勿論
作用と副作用を事前に調べておくと医療職とのコミュニケーションが深まります。

【高齢者に処方される代表的な薬】

下剤:マグラックス(腸内に水分を集め、お通じを穏やかにする)
   
降圧剤:アダラート ノルバスク(カルシウム拮抗薬、クレープフルーツとの食べ合せに注意)

痛み止め:ロキソニン(痛み全般に有効、胃荒に注意する為、必ず食後と胃薬同時に服用)

認知症:アリセプト(脳内物質の記憶学習に関係しているアセチルコリンを分解させないようにする)

塗布薬:アズノール(皮膚の炎症を抑える作用、床ずれの初期症状等に有効)

抗生物質:フロモックス(多種な細菌感染に有効、ウィルス感染には効果なし)

【訪問看護ステーションによるリハビリ】

訪問してくれるリハビリには
診療所や病院が行っている【訪問リハビリ】と
訪問看護ステーションが医師の指示に基づいて行う【訪問看護ステーションで行う訪問リハビリ】とがあります。

どのように使い分けるのか?

【診療所や病院が行う訪問リハビリ】は
① 診療所や病院直営なので、主治医と直結してサービスを実施している。
② この主治医は【整形外科】が殆どで、専門的なリハビリが期待できる。
なので、診療所や病院が行う訪問リハビリは
要支援1.2~要介護2.3程度までが利用目安すとなり主治医と連携の取れた安定した、専門的なリハビリが期待できます。

【訪問看護ステーションで行う訪問リハビリ】は
① 主治医の指示に基づきリハビリを実施するため、整形外科に限らず、内科等の幅広い担当医からリハビリ指示が出来ます
② 医療処置の後に簡単なリハビリを行う事が出来る。
なので、訪問看護ステーションの行う訪問リハビリは
要介護2~5までの医療的な要素の強い方が利用すると、リハビリ以外のメリットもあります。

※あくまでも一例ですのでご参考になればと思います

訪問リハビリの内容はかなりの効果が期待できますので、次回詳しく説明します。